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ユニバーサル行動規範/執行ガイドライン

From Wikimedia Foundation Governance Wiki
This page is a translated version of the page Policy:Universal Code of Conduct/Enforcement guidelines and the translation is 100% complete.
行動規範

1. UCoC執行ガイドライン

これらの執行ガイドラインでは、コミュニティとウィキメディア財団がどのようにしてユニバーサル行動規範(UCoC)の目標に到達するか説明します。 この文書は主に以下の項目に触れています。すなわち、UCoCの理解の促進、違反行為を阻止するための積極的な働き、UCoC違反への対応に関する原則の策定、ローカルの執行機関への支援です。

UCoCはオンラインとオフラインのあらゆるウィキメディア空間に適用されます。そのためUCoCを執行するには、責任を共有することが必要です。 ウィキメディア運動における、中央からローカルへの権限移行という方針に従って、UCoCは、可能な限りもっともローカルに関連する水準で施行されるべきです。

執行ガイドラインは、現在および未来の執行機関と協力するための枠組みを提供します。ガイドラインはUCoCの実施にあたって、公平で安定した土台を作ることを目標にしています。

1.1 UCoC執行ガイドラインの翻訳

UCoC執行ガイドラインの原文は英語版である。原文はウィキメディア・プロジェクト群で使用する為に、さまざまな言語に翻訳され、ウィキメディア財団はその正確な翻訳のために最善を尽くす。 但し、英語版を本ガイドラインの正文とし英語版と翻訳版の間で、理由の如何を問わず意味の相違がある場合、英語版に基づいて決定する。

1.2 UCoC執行ガイドラインの再検討

理事会の勧告に基づき、執行ガイドラインの批准から1年後に、ウィキメディア財団はUCoC執行ガイドラインとUCoCについて、コミュニティ協議及び再検討を実施する。

2.予防作業

この節では、ガイドラインの提供によって、ウィキメディア・コミュニティ群および各提携体が、ユニバーサル行動規範(UCoC)について意識し、十分な理解と遵守に至ってもらうことを目指しています。そのため、このセクションでは、UCoCへの認知を高めるために、UCoCの翻訳の取り扱い、適切または必要な場合に、UCoCに対する自発的な遵守を促す推奨事項を詳しく説明します。

2.1 UCoCの告知と確認

UCoCはウィキメディア・プロジェクトに関わり、貢献する全員に適用されます。UCoCはまた、世界中のウィキメディア・プロジェクトが共同で働く際の、行動やふるまいの基準として適用されます。公式の対面イベントあるいはサードパーティ運営のプラットフォーム上のウィキメディア関連空間などでも同様です。

私たちはUCoCをウィキメディアの利用規約につけ加えるよう推奨します。

さらに、次の各者はUCoCの遵守を示す必要があります。

  • ウィキメディア財団の全スタッフおよび契約職員、理事会の理事 、ウィキメディア提携団体委員会の委員とスタッフ。
  • ウィキメディア提携団体およびウィキメディアとの提携を希望する団体の代表者全員(たとえば以下のような人々ですが、以下に限りません。すなわち、調査研究場所がオン-ウィキあるいはオフ-ウィキどちらであろうと、ウィキメディアが資金提供したイベント、団体、学習において、主催および/あるいは協力して働くことを望む個人または個人の集まり)

そして、

  • ウィキメディア財団のトレードマークをイベントで使用することを望む各者。イベントはたとえば以下のような内容ですが、以下に限りません。ウィキメディアのトレードマークによって代表されるイベント(たとえば、イベント名に含めることも含む)または、イベントで、ウィキメディア組織、コミュニティ、プロジェクトなどを代表するとき。(たとえば、司会者やブースの運営者などですが、それだけに限りません)

2.1.1 UCoCの認知を高める

UCoCへの認知を高めるために、UCoCへのリンクを以下の場所で利用可能にするものとします。

  • 利用者およびイベントの登録ページ。
  • ウィキメディア・プロジェクトのページフッター(ページ最下部)とログアウトしている利用者に対する編集確認ページ(適切かつ、技術的に可能な場所)。
  • 公認の提携団体や利用者グループの公式サイトのフッター。
  • 対面やリモート、両者が含まれたイベントで目立つように伝達。
  • ローカルのプロジェクト、提携団体、利用者グループ、イベント主催者によって適切だとみなされるあらゆる場所。

2.2 UCoC研修の推奨

U4C設立委員会は、ウィキメディア財団の支援のもとで、UCoCへの一般的な理解と実施する技能を提供するために、研修を開発し、実行するものとします。(※U4C、ユニバーサル行動規範統合委員会)

研修の開発にあたって、関連する利害関係者は、協議するよう推奨されます。利害関係者には以下の各者が含まれますが、彼らだけには限りません。提携団体、提携団体委員会、裁定委員会、スチュワードと他のアドバンスド・ライツ保持者(上級権限保持者)、トラスト&セイフティ(信頼と安全チーム)と法務、その他、UCoCの全体像を規定するために有益だと考えられる人々です。

これらの研修は、UCoCの執行手続きに加わりたい人、あるいはUCoCについてもっと知りたい人を対象としています。

研修は、たがいに独立した単位(モジュール)群で構成され、概要全般、違反と支援の把握、複雑な事例と反論を扱うものとします。第1期のU4Cは発足後、必要に応じて、研修単位を維持管理し、更新する責任を負うものとします。

研修単位は、さまざまな形式およびアクセスしやすい、さまざまなプラットフォームで利用可能にする必要があります。ウィキメディア財団は、コミュニティ規模での研修提供を望むローカルのコミュニティやウィキメディア提携団体に対し、実施にあたって資金援助を行うものとします。これには翻訳のための支援も含まれます。

私たちは、ひとつ研修単位を修了した参加者たちに対して、研修完了を公開する選択肢を与えるよう、推奨します。

以下の研修の組み合わせを提案します。

研修単位 A - 事前指導(UCoC - 全般)

  • UCoCおよび執行に対する共通認識を確実にするために役立ちます。
  • 違反報告に使用可能なツールと同じように、UCoCの実体および期待される執行を簡潔に説明します。

研修単位 B - 識別と報告(UCoC違反)

  • UCoC違反を識別できる能力、また、報告の手順、報告用ツールの使い方の学習を、人々に与えます。
  • 違反およびローカルの文化的背景のなかで報告すべき事例を識別する方法、報告書を作る方法や場所、またUCoCの過程のなかで事件への最善の対処方法を詳細に説明します。
  • 研修はまた、(必要に応じて)UCoCの具体的な部分にも焦点を当てる必要があります。たとえば嫌がらせや、力による不当な扱いなどです。

研修単位 C - 複雑な事件、反論(UCoC - 多数の違反、反論)

  • これらはU4Cに加わるために必須の研修単位です。将来のU4C応募者やアドバンスド・ライツ保持者にお勧めします。
  • この研修単位は2つの具体的なテーマを含まなければなりません。
    • C1 - 複雑な事件への対処 (UCoC - 複数の違反):これはクロス-ウィキ(複数のウィキにわたる)事件や、長期の嫌がらせ、脅威の信憑性の確認、効果的で思いやりに満ちた対話、被害者や他の弱者の安全確保を取り扱います。
    • C2 - 反論への対応、事件の終了(UCoC - 反論):UCoCにおける反論への対応を扱います。
  • これらの研修単位は、「非公式の個人データへのアクセス方針」に署名したU4C委員や応募者、コミュニティが選んだ役務者に提供するために、指導員が主導し、目的に合うよう調整されている必要があります。
  • 可能であれば、独立した研修単位、スライド、質問といった、指導員主導の研修資料は、公開で入手できるようにするものとします。 

3. 対応作業

このセクションは、ユニバーサル行動規範(UCoC)違反報告を進めるためのガイドラインや方針の提供のほかに、ローカルの執行機関がUCoC違反に対応する場合の推奨事項の提供も目標にしています。 このセクションの終わりでは、報告の手続きのための、重要な原則を詳しく説明します。また、報告用ツールをつくるよう推奨し、違反のさまざまな段階への対処案、ローカルの執行機関のための推奨事項にも言及します。

3.1 UCoC違反の記録と対応過程の原則

以下の原則は、運動全体の報告システムの標準となるものです。

報告

  • UCoC違反の報告(以下、告発)は、違反行為の対象となった人物と同様に違反を認知した無関係の第三者もそれを行うことができる。
  • 告発は、オンライン、オフライン、サードパーティの運営する空間、あるいは混在した場で起きたかどうかにかかわらず、UCoC違反の対象にすることができる。
  • 報告書は公開あるいは、プライバシーをさまざまな度合いで尊重しながら作成しなければならない。
  • 告発の信憑性と検証可能性は、リスクと正当性を適切に評価するために徹底的に調査されなければならない。
  • 信用に欠ける或いは不公正な告発を頻繁に行う利用者は報告する権限(以下、告発権)を失うことがある。
  • 告発された者(以下、被告)は、自己に対し違反したと告発された詳細について知る権利を有する。但し、その詳細へのアクセスが危険を引き起こす可能性が高い場合、或いは報告者や他者の安全に害を及ぼすと判断された場合を除く。
  • 被告がその習熟していない言語によって作成された報告書による告発を受けた場合、ウィキメディア財団は翻訳のための資源を提供しなけれならない。

違反審査の手続き

  • 審査の判決(以下、判決)は違反の重大性に比例するものとする。
  • 判決は、背景を活用して情報を得たうえで、UCoCの原則に沿って判断される。
  • それぞれの事案は着実な時間枠のなかで解決し、長期化した場合は、参加者に対し、適切な時期に最新情報を提供するものとする。

透明性

  • UCoC違反に対し処罰を行う団体は、非公開事案について、そのプライバシーとセキュリティを保ちながら、可能な限り、それらの事案を公開記録として提供するものとする。
  • ウィキメディア財団は、プライバシーを尊重しデータ収集は最小限という原則を守りながら、3.2節で提案された主要報告ツールの使用量について、基本的な統計を公開するものとする。
    • UCoC違反に対し処罰を行うその他の団体は、プライバシーを尊重しデータ収集は最小限とする原則を守りながら、可能なかぎりUCoC違反と報告に関する基本的な統計を公開するよう奨励される。

3.1.1 進行中の事件に対してリソースを提供する

ローカルの運営組織によるUCoCの執行は、多様な方法で支援されるものとします。コミュニティは、以下のような複数の要因に基づき、異なったメカニズムや取り組み方法を選ぶことができます。例:ローカルの執行機構の能力、運営のための方法、コミュニティの好みなどがあります。 これらの取り組み方法には、以下を含めてもかまいません。

  • ひとつのウィキメディアプロジェクトに限定された裁定委員会(ArbCom) 。
  • 複数のウィキメディア・プロジェクトが共有する裁定委員会。
  • アドバンスド・ライツ保持者たちによる、脱中央集権化(分散化)したやり方での、UCoCと矛盾のないローカルの方針の執行。
  • 方針を実施する、ローカルの管理者たちによる委員会。
  • ローカルのコミュニティでの議論と賛同を通じて、ローカルの方針を実施する寄稿者たち。

コミュニティは、UCoCに抵触しない範囲で、既存の手段によって規則の執行を続けるべきです。

3.1.2 違反の種類による執行

本セクションでは、違反の種類について規定するものの、これらに限定されない。それぞれについて取り得る罰則について説明する。

  • あらゆる種類の肉体的な暴力の脅威に関する違反
    • ウィキメディア・トラスト&セーフティ・チームが対処します。
  • 訴訟や法的な脅迫を含む違反
    • ウィキメディア財団法律チーム、またはふさわしい場合には、脅威の理非を適切に判断できるその他の専門家に送られます。
  • 個人特定可能な情報の未承諾公開に関する違反
    • 一般的には、オーバーサイトあるいは編集禁止権限をもつ利用者が対処します。
    • トラスト&セーフティが対処する場合もあります。
    • 法的な義務が必要になる違反の際には、ウィキメディア財団法律チーム、またはふさわしい場合には、事件の理非を適切に判断できる、その他の専門家に送られます。
  • 提携団体の組織運営に関連する違反
    • 提携団体委員会または同等の組織が対処します。
  • 技術空間での違反
    • 技術上の行動規範委員会が対処します。
  • 組織的なUCoC不履行
    • U4Cが対処します。
    • 組織的な不履行は、たとえば以下のようなものです。
      • ローカルにUCoCを実施する能力がない場合。
      • ローカルの一貫した決定がUCoCと矛盾する場合。
      • UCoC実施の拒否。
      • リソースの欠如と問題に対処する意思の欠如。
  • オン-ウィキでのUCoC違反
    • 複数のウィキにわたって発生したUCoC違反:

グローバル管理者とスチュワード、単一ウィキのUCoC違反を処理する集団、あるいはこのガイドラインに抵触しない場合、U4Cが対処します。

    • 単一のウィキで起きたUCoC違反:このガイドラインに抵触しない場合、既存の執行組織が、自分たちの既存のガイドラインに基づいて対処します。
      • たとえば荒らし投稿のような単純なUCoC違反には、このガイドラインに抵触しない、既存の手段を通じて、既存の執行機関が対処します。
  • オフ-ウィキでの違反
    • ローカルに裁定委員会のような管理機構が存在しない場合、あるいは、他の責任を持つべき執行機関から事件を委ねられた場合、U4Cが対処します。
    • 場合によっては、オフ-ウィキでの違反を、そのオフ-ウィキ空間関連の運営機関に報告することが役立ちます。そのために、既存のローカルとグローバルな執行機構の報告活動ができなくなるわけではありません。
  • 対面のイベントおよび空間での違反
    • 既存の執行機関は、しばしばオフ-ウィキ空間での行動のルールを提供し、実施しています。これには、「友好的であるべき空間の方針」やカンファレンス(会議)のルールが含まれています。
    • この違反に対処する執行機関は、事件をU4Cに委ねることができます。
    • ウィキメディア財団が運営するイベントの場合、トラスト&セーフティ・チームがイベントの原則を提供し、実施します。

3.2 報告ツールの推奨

ウィキメディア財団は、UCoC違反の報告を1箇所に集め、処理するためのツールを開発、維持管理するものとします。 このツールを使用して、メディアウィキを通じて報告書を作ることが可能になるものとします。UCoC違反の報告と処理のための、技術的な障壁を低くするのが目的です。

報告にあたっては、すぐに使用可能な情報を含めるか、現在の事件の記録を文書化して提供するべきです。 報告者が該当事件の処理担当の全責任者に、詳細を提供できるようにする報告用インターフェイスをつくるべきです。 詳細には以下のような情報が含まれますが、これに限定されません。

  • 報告された行為がどのようにUCoCに違反しているか。
  • このUCoC違反によって、誰が、あるいは何が損害を受けたか。
  • 事件(または複数の事件)が起きた年月日と時間。
  • 事件(または複数の事件)の場所(複数の場所)。
  • その他の情報で、執行グループが最善の処理方法を見つけることが可能になるもの。

ツールは、簡単に使えること、プライバシーとセキュリティ、作業過程の柔軟性、透明性といった原則のもとで運用すべきです。

UCoCの執行を委任された個人は、このツールを使う必要はありません。 彼らは事件に長く関わるほど、同上の原則によって、使用の簡単さ、プライバシーとセキュリティ、作業の柔軟性、透明性に基づいて、適切だと思うツールを使って働き続けることができます。

3.3 執行機関のための原則と推奨事項

可能であれば、ここで述べたガイドラインに従って、私たちは既存の執行機関に報告書を受け取る責任を分配し、UCoC違反に対処するよう奨励します。 ウィキメディア運動全体で、確実に一貫してUCoCを執行し続けるため、私たちは、違反に対応する際に下記の基本方針を適用するよう推奨します。

3.3.1 告発手続きの公平さ

私たちは執行機関に対し、支援的な利益相反の原則をつくり、維持するように奨励します。これらは、管理者やその他の人が問題に巻き込まれた場合、どの時期に報告を避けるか、または報告への関与をやめるか決定するために役立つべきです。

すべての当事者は、通常、問題と証拠について自身の見解を明らかにする機会を与えられるものとするとともに、より多くの情報、観点、背景を提供する助けとして、第三者に依頼して意見を得ることもできます。 この機会は、プライバシーと安全を守るために限定される可能性があります。 

3.3.2 告発手続きの透明性 

U4Cは、4.1で定義された目的と範囲にしたがって、UCoCの実施活動の有効性および(ウィキメディア)運動を通じた一般的な違反との関連を説明文書として提供するものとします。U4Cは、調査の実施に際して、ウィキメディア財団の支援を受けるべきです。文書化の目的は、執行機関がUCoC執行するための最良の慣行を開発する手助けとなることです。

ウィキメディア・プロジェクトと提携団体は、可能なかぎり、UCoC方針文書に従って、原則と執行の仕組みの概略を示したページを維持管理するものとします。すでにガイドラインや原則があるけれどUCoCの方針文書と矛盾する場合には、プロジェクトや提携団体はグローバルなコミュニティの標準に適合するよう、変更を議論すべきです。 ローカルな原則を更新あるいは新しく制定する場合、UCoCと抵触しない方法で行われる必要があります。プロジェクトと提携団体は、未発表の新しい方針やガイドラインに対して、指示的な意見をU4Cに求めることができます。

ウィキメディア関連の会話が、サードパーティー(たとえば、「ディスコード」や「テレグラム」など)の運営するプラットフォームの、関連空間で行われた場合、ウィキメディアの利用条件は適用されません。 その特定のウェブサイトの利用条件と行動方針があてはめられます。 とはいえ、サードパーティ運営プラットフォームにおけるウィキメディア関連空間での利用者の行動は、UCoC違反の報告で証拠として受け入れられます。 私たちは、ウィキメディア・コミュニティの成員で、かつ、ウィキメディア関連空間のサードパーティ運営プラットフォームで司会をする人たちに、その空間の方針にUCoCを尊重して取り入れるように奨励します。ウィキメディア財団は、サードパーティのプラットフォームにおいて、オン-ウィキでの衝突が続くのをやめさせる、最適な実践方法を探し、推奨するべきです。

3.3.3 反論

個々のアドバンスド・ライツ保持者は、行った活動について、U4C以外のローカルやローカル間で共有している執行機関に対して不服を申し立てることができるものとします。 そういった執行機関が存在しない場合、U4Cへ不服の申し立てが許可されます。このような手続きの一方、ローカルのコミュニティは、別のアドバンスド・ライツ保持者に不服を申し立てることができます。

執行機関は、事件関連の背景情報および情状酌量が可能な要因に基づいて、不服の申し立てを受け入れ、考慮する基準を設定することとします。 要因には以下が含まれますが、しかしこれだけに限りません:非難の検証可能性、処罰の長さと効果、また職権乱用の疑いあるいは他の構造上の問題、更なる違反の可能性はあるかどうかなどです。不服の申し立てが受け入れられるかは保証されません。

ウィキメディア財団の法務部による確実な決定に対しては、不服を申し立てることはできません。 とはいえ、事案評価委員会はウィキメディア財団事務局の行動と決定の一部を審査することができます。法的要件が異なる場合は、事務局の行動と決定への具体的な不服の申し立てが制限され、一部の管轄で適用されない可能性があります。

執行機関は、不服の申し立てを許可または拒否の根拠を証明するために、事件に対して十分な情報に基づいた全体像を求めるべきです。情報は慎重に扱われなければなりません。関係者のプライバシーと、意思決定の過程は特に注意深く取り扱われるべきです。

この目的に到達するために、私たちは執行機関に対して、上訴を審査する際に、さまざまな要因を考慮するように推奨します。以下の事柄が含まれますが、これだけに限定されません。

  • 違反によって引き起こされる重大さと損失
  • 違反の前史
  • 不服が申し立てられている制裁が過酷かどうか
  • 違反からの期間の長さ
  • 連絡時の違反の分析
  • 職権乱用の疑い、あるいはその他のシステム上の問題

4. UCoC統合委員会 (U4C)

新しい、グローバルな委員会「ユニバーサル行動規範統合委員会」(U4C)が結成されるものとします。この委員会は、他の高位意思決定機関(たとえば、裁定委員会や提携団体委員会など)と同等の地位を得ます。 設立目的は、UCoCの執行にあたって、ローカルのグループに組織的な不具合がある場合の最終的な解決機関の提供です。U4Cの委員は、私たちのグローバルなコミュニティから構成され、グローバル性と多様性を反映しているものとします。

4.1 目的と適用範囲

U4CはUCoC違反の報告を監視し、必要に応じて追加調査を行い、措置を講じることがあります。 U4Cは通常、UCoCの実施状況を監視し、評価するものとします。 U4Cは、UCoCとUCoC執行ガイドラインについて、ウィキメディア財団とコミュニティが検討すべき適切な変更を提案することはできますが、どちらの文書も(U4Cが)勝手に変えることはできません。 必要な時には、U4Cはウィキメディア財団のために事件への対処を支援します。

U4Cは

  • 執行ガイドラインのなかで述べられているような状況での、告発と反論に対処する。
  • 前述の告発と反論を解決するために必要なあらゆる調査を実施する。
  • UCoCの最善慣行のためにコミュニティにリソースを提供する。たとえば、必要に応じて、義務的な研修の資料、あるいは他のリソースなど。
  • コミュニティの成員や執行機関との協力作業のなかで、もし必要が生じたら、UCoC執行ガイドラインおよびUCoCの最終的な解釈を提供する。
  • UCoC実施にあたってその有効性の監視と評価を行い、改善の勧告を提供する。

U4Cは、UCoC違反またはUCoC執行を第一に含む事件以外は引き受けてはなりません。 U4Cは、深刻な組織上の問題例を除き、最終的な意思決定権を委任できます。 他の執行機関との関連におけるU4Cの責任は、3.1.2.節で説明しました。

4.2 選出、委員の立場、役割

グローバルコミュニティが主催する1年に1度の選挙によって、投票権をもつ人々が選ばれるものとします。候補者はどのコミュニティの成員でも構いませんが、以下が必須です:

  • ウィキメディア財団の非公開の個人データにアクセスする基準を満たしていること、および、選挙声明で、完全に基準を守ることを表明するものとします。
  • 現在どのウィキメディア・プロジェクトでも制裁を受けていないだけではなく、イベントから追放されていてはなりません。
  • UCoCの遵守
  • 選挙プロセスのあいだに決まった、その他のどんな被選挙要件をも満たしているものとします。

特殊な状況のなかで、もし、委員の辞職や活動できない状態のために、追加の委員が緊急に必要であれば、U4Cは暫定的な選挙を行うことができます。 選挙は通常の年次選挙と同じ形式で行うものとします。

U4Cの個々の委員は、他の地位から離れる必要はありません。(たとえば、ローカルの管理者、裁定委員会のメンバー、イベント安全調整役) しかしながら、他の役職の結果として直接関わった進行中の事件には、彼らは委員として参加できません。 U4Cの委員は、非公開個人データ方針に署名するものとします。非公開情報に近づくことができるようにするためです。 U4C設立委員会は、U4C委員のために適切な条件を決定するべきです。

U4Cは必要に応じて、小委員会を設置したり、特定の作業や役割に個人を指名することができます。

ウィキメディア財団は、投票権の無い委員を2名までU4Cに任命することができます。また、要望や目的に応じて、支援スタッフを提供するものとします。

4.3 手続き

U4Cは、会議の招集頻度やその他の手続きを決定するものとします。U4Cは、業務範囲内であれば、手続きを作成または変更することができます。必要な場合はいつでも、委員会は、計画した変更を実施する前にコミュニティの意見を求めるべきです。

4.4 方針と先例

U4Cは新しい方針をつくることはなく、 UCoCを修正または変更することもありません。代わりにU4Cは、UCoCが定義された範囲において、これを適用して、実行します。

コミュニティの方針、ガイドラインおよび規範は、時間をかけて進歩するため、以前の決定が考慮に入れられるのは、現在の状況に関連が残っている範囲においてだけです。

4.5 U4C設立委員会

UCoC実施ガイドラインが承認された場合、ウィキメディア財団は、下記の目的のために設立委員会を作ります。

  • U4Cの手続き、方針、先例の使用の明確化。
  • U4C手続きの残りの下書き制作。
  • U4Cの設立のために必要な他の全支援計画の指定。
  • U4Cの最初の選挙手続きを進める支援。

設立委員会はボランティアのコミュニティ成員、提携団体のスタッフ、あるいは理事会の委員、ウィキメディア財団のスタッフから構成されるものとします。

委員は、ウィキメディア財団のコミュニティの回復力と持続可能性副代表によって選ばれるものとします。ボランティアの委員は、尊敬されているコミュニティ成員であるべきです。

委員は私たちの運動の執行手続きの経験の多様性を反映しているものとします。たとえば以下のような事柄ですが、以下に限りません:方針の下書き作り、ウィキメディア・プロジェクトでの既存の規則と方針の適用に対する覚醒と熱心な参加、意思決定への参加。委員はまた運動の多様性を反映している必要があります。たとえば以下のようなものですが、以下に限りません: 話す言語(複数)、ジェンダー、年齢、地理、プロジェクトの種類。

U4C設立委員会の働きは、グローバル評議会あるいはコミュニティでのプロセスのどちらかによって承認されるものとします。この文書が承認されるものとするのと同様です。 設立委員会の働きを通じて、U4Cが設立されたのち、設立委員会は解散するべきです。

5. 用語集

管理者 Administrator (sysop または admin) 
メタの定義を参照してください。

アドバンスド・ライツ保持者(上級権利保持者)Advanced rights holder
通常の編集権を超える管理上の権利を持つ利用者で、一般にコミュニティでの過程で選ばれるか、裁定委員会に指名されます。これには完璧にそろっていない一覧表も含まれます。ローカルの管理者(sysops / administrators)、役務者(functionaries)、グローバル管理者(global sysops)、スチュワード (stewards)などです。

提携団体委員会  Affiliations Committee 短縮形 Affcom 
メタの定義を参照してください。

裁定委員会 Arbitration Committee 短縮形 ArbCom:一部の紛争に対して最終的な決定をくだす、信頼のあつい利用者のグループです。

各裁定委員会の責任範囲はそのコミュニティによります。裁定委員会はひとつ以上のプロジェクト(たとえばウィキニュース、ウィキボヤージュ)そして/あるいはひとつ以上の言語版のために働く可能性があります。このガイドラインの目的においては、ウィキメディア技術空間と管理者委員会のための行動規範委員会も含みます。メタウィキにある定義も参照してください。

拘束を表す動詞
執行ガイドラインの下書きを書く際、起草委員会は、拘束を表すために、 「つくる」「開発する」「施行する」「しなければならない」「生産する」「するものとする」「するものとする」という動詞および助動詞を考えました。「推奨を表す動詞」と比較してください。(訳注:shallとwillは意味合いとしては差異は無いため、どちらも「するものとする」と翻訳)

事案審査委員会
メタでの定義をご覧ください。

コミュニティ Community
プロジェクトのコミュニティを参照してください。プロジェクトのコミュニティによる意思は、一般的に合意によって決定されます。プロジェクトを参照してください。

クロスウィキ
複数のプロジェクトに影響を与えること。参照: グローバル

イベント安全コーディネーター(調整役)Event safety coordinator
対面型のウィキメディア関連イベントの主催者によって、イベントの安全とセキュリティに対する責任者として任命された人物のことです。

グローバル Global
すべてのウィキメディアプロジェクトを参照してください。ウィキメディア運動では、「グローバル」は「ウィキメディア業界用語」であり、運動全体にわたる管理運営を行う複数の組織のことです。たいてい「ローカル」との対比として使われます。

グローバル管理者 Global sysops
メタでの定義をご覧ください。

高位意思決定機関 High level decision making body
彼らを超えて、上訴することが不可能なグループ(すなわちU4Cや裁定委員会、提携団体委員会)。それぞれの問題はそれぞれの高位意思決定機関が受け持ちます。この用語には、掲示板を見て議論に参加して決定に至った利用者グループは含まれません。彼らの議論の決定に対して反論できなくてもです。

ローカル(Local)
単一のウィキメディア・プロジェクトまたは提携団体や組織のこと。この用語はたいてい最小の、もっとも直接的に状況に適用できる運営機関に使われます。

オフ-ウィキ Off-wiki
一般的には、ウィキメディア財団が運営していないオンライン上の空間について言います。ウィキメディア・コミュニティのメンバーが参加し、活発にその場を使用していてもオフ-ウィキです。オフ-ウィキの例はツイッター、WhatsApp、IRC、Telegram、Discord、その他です。

個人を特定する情報 Personally identifiable information(PII)
は具体的な個人を特定する可能性を持ったデータすべてです。ある人物を他の人々から区別できるであろうどのような情報も、以前は無名であったデータが脱匿名化して使用されるようになったものもPII(個人を特定できる情報)と考えられます。

プロジェクト(ウィキメディア・プロジェクト)
ウィキメディア財団(WMF)が(訳注=インフラを)運営するウィキ。Project (Wikimedia project)

推奨を表す動詞
執行ガイドラインの下書きを書く際、起草委員会は、推奨を表すために動詞および助動詞「奨励する」「可能である」「提案する」「推奨する」「すべきである」の使用を考えました。束縛を表す動詞と比較してください。

サードパーティのプラットフォームによって運営される関連空間
私的なウィキを含むウェブサイトで、運営者はWMFではありませんが、利用者がウィキメディア関連のプロジェクトについて議論している空間。しばしばウィキメディアのボランティアが司会を務めています。

職員

ウィキメディア運動組織に業務を割り当てる雇用者または/あるいは職員、ウィキメディア運動空間やウィキメディア・コミュニティ成員とのやりとりが必要な仕事をする運動組織の契約職員です。(ウィキメディア運動空間には、運動の活発化に使われるオフウィキのプラットフォームと同様、第三者による空間も含まれます。)

スチュワード Steward:

メタでの定義をご覧ください。

組織的な問題または不履行
ユニバーサル行動規範の不履行のうち、複数の参加者、特に上級権限保持者が関与して発生するパターンという問題のことです。

ウィキメディア財団事務局行動方針:方針あるいは後継の同等の方針があります。